プラチナまりん の 気ままブログ

小説 とか イラスト などを 気の向いた時に 投稿します🤗

初夏の幻影

《初夏の幻影》

 

 

 

「アイスクリーム 食べる?」

 


「いらなぁーい…」

 


微かに聞こえる 小さな声で 呟きながら

メリーゴーランドが 斜め右に見える 赤いベンチに キミ は座った。

 


初夏の日差しの下 朝から なんとなく 不機嫌 だった。

 


無理もない この時間 キミ は いつも 寝てるのだから。

 


煌びやかな ネオンの下 ミラーボールが 照らす 舞台の上

優しい微笑み 柔らかな肌 色っぽい瞳 年上の女性への憧れ

それら全てに ボク の ココロ は奪われ

何度となく お店に通い 今日 やっと デート にこぎ着けたのだ。

 


「まずい…マズイ…このままでは…いかん」

 


お店の中では あんなに ざっくばらん 気楽に 話せているのに

まるで 顔面が 金縛りになったように 唇から コトバ が出て来ない。

 


小さい背中に ポツンと咲いた 黄色い日傘が 

メリーゴーランドを眺めながら クルクル 廻っている

緩やかな音楽とともに 木馬 が廻り 小さな花と 同調する

キミ は 日傘を 右へ左へ 回転させる 暇をもて遊ぶ 子供のように

 


「キョウコさん の国でも 遊園地 あるの?」

 


とっさに 出た コトバ は この上なく 失礼な 質問だった。

 


『しまった!』

 


「ごめ…」

 


言い掛けた途中で キミが 口を開いた。

 


「ゆーえんち  あるぅ  ウフフ」

 


予想外に 笑った。それは 2人の空気感 緊張感 ボクの 焦燥感 …

諸々の全てを 一掃し 何もかもを 包む 母性のように 微笑んだ。

 


その 潤いのある瞳に 吸い込まれ しばらく ボク は動けなかった。

 


初夏の日差しに 淡い褐色の肩にかかった髪の毛が 

潮風に 吹かれ その度 甘い匂いに 周囲が包まれる。

 


時に 少女のように悪戯っぽく 

 


時に 妖艶な 小悪魔のように

 


今までも いろんな キョウコさん を 見て来たが

 


今は こんなに キレイな キョウコさん に ただただ 見惚れている。

 


赤いベンチから 立ち上がり 黄色い日傘を 畳んだ

 


髪を かきあげながら キミ が次に 口にした コトバ 

 


「ワタシ ねむい  … やすむ とこ  いく」

 


動けなかった ボク の 全細胞は フル回転 で 活動しだした。

 


そして 同時に  理性  が 止まった。

 

 

 

赤いベットの 上で 黄色いシーツ に包まれている ふたり。

 


天井を見上げる ふたり が映っている。

右にも左にも…ゆっくり と 回る ボク と カノジョ 

それは まるで メリーゴーランド のように

 


右の肩紐を そっと おろし

両手を カノジョ の 背中 にまわす

緊張 で 手が震えて 思うように 外れない

そもそも どんな機能で 装着 されているのか 知らない だって 見た事さえ 無いのだから

 


「わかるぅ?」

 


しばらく 右往左往 している ボクの手に

カノジョ の 手が サポート され

 


花柄模様が入った ピンク の カップ がボクの 両手に 収まった。

 


同時に カノジョは 両手で 胸を 押さえた。

 


「はずかしいぃ…もっと くらく くらくぅ」

 


部屋の 電気 を 落とし 密閉された 窓から 僅かに 昼下がりの 木漏れ日 が 射し込んでいる 以外 は ほとんど 真っ暗 になった。

 


カノジョの 息づかい が 近づいてくる。

 


「め を とじて…」

 


両手で ボクの 頬は 包まれた。

 


次の瞬間 …

 


カノジョの…

 


やわらかな 唇が …

 


サラサラした髪の毛が…

 


そして 素肌が…

 


優しく ゆっくり と 触れた

 


「うっ…。」

 

ドキドキ! ドキドキ!

 


心臓の 音 が はじめて 自分の 鼓膜に 届いた。

 


「はじめて?」

 


「うっ…うん」

 


「うふふっ じゃぁ よこに なって…」

 


カノジョの 腕は ボクの 腰を引き寄せ

もう片方の手は シーツを 手繰り寄せた。

 


暗闇の中でも だんだん 目が慣れてきた。

 


子供の頃 新体操 を していた話を 聞いた事がある。

 


均整のとれた プロポーション 

 


着衣では 想像し得なかった 胸の膨らみ

 


引き締まった腰まわり 白雪のような 肌

 


憧れだった カノジョ 

 


カノジョの カラダ

ボクの カラダ  …  つながっている

 


ふたりの 息づかい  鼓動 が

 


ひとつ に つながっている。

 

 

 

夢のようだ …

 

 

 

夢 みたい …

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

赤い文字盤に 蛍光色の 黄色い 長針と短針が

決まって『2:44』を 示している。

 


そう…

 


あれは … 初夏の昼下がり

 


カノジョ と ボク が 通り抜けた

 


青春の幻影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の想い出

《夏の想い出》

 

 

 

毎年 夏休み になると 

西浦温泉 『ホテル 東海園』へ

家族で 出掛けた。

一泊の時もあれば 二泊の時もあった。

当時 インベーダーゲーム が大流行で

もっぱら 海水浴より 

ホテル内の ゲームセンターへ行く事が

楽しみだった。

住んでいる 豊田市からは

車で 2時間程 見慣れた景色が

車窓を 過ぎる 

時々 新しい建物が あったりもする 

 


「そろそろ 窓 開けようか」

 


潮風が 頬を撫でる 海の匂い

波の音 蝉の声 

浜風で揺れる木々 草花の せせらぎ

懐かしい 匂い 音

 


これもあれも 全て 一年振り

そう 毎年 ここに来た

去年も一昨年も 6歳の時も10歳の時も

これからも ずっと 続くと思ってた

それは 毎年 お正月が来るように

それは 毎年 クリスマスが来るように

ごく あたりまえ の 事として

 


そして 今年も流れる景色を 見ている

 


「そろそろ 窓 開けようか」

 


懐かし匂いと音 頬をつたう一雫

 


袋を 取り出す

 


ひとつまみ…ふたつ…みっつ…

 


銀色に 輝いて

 


潮風にふかれ 波音の方へ

 


静かに  舞っていった

 

 

 

 

路肩に咲く花

《路肩に咲く花》

 

 

 

僕たち 3人は 行く宛もなく 

ただただ 歩いていた。

 


目的地を 誰が言う訳でもなく

何かを喋る訳でもなく

ただただ 道なりに 歩いていた。

 


何故 あんな事をしてしまったのだろう?

 


計画があったものでもなく

その場 盛り上がり の 集団心理

 


実行犯は2人 気の弱い僕は見張り役

 


『賽銭泥棒』

 


小学生の子供なら 

「コラっ!」の ゲンコツ 

ひとつで おさまった ものを…

 


その後が まずかった。

 


その神社に 何百年も伝わる

御神体〉の 鏡 を よりによって

割ってしまったのだ!

 


2人が どうして そんな 余計な事を

しなのか 今だに理解出来ない。

 


とんだ とばっちりだ。

 


この 2人 は 町内でも名の知れた

 


『稀代の悪』

 


クソガキ中のクソガキ

 


この町に 引っ越ししてきたばかりの

僕は何故か この 2人 とウマがあった

 


出校前 早朝に スーパーに入り込んで

お菓子を たらふく 盗んだり

 


ドアロックのかかってない 

車から 現金を盗んだり

 


雨の日 建築中の一軒家に 入り

柱やら壁を 根こそぎ破壊したりもした

 


子供心に 殺人とクスリ 以外は

概ね やった 自負がある。

 


(こんな事 自慢にも ならないし

 到底 人前で 言える事ではないが…)

 


そんなこんなの 悪事の集大成が

 


御神体〉 破壊 という

 


神社はもちろん

町長 校長 担任 家族 をも巻き込む

前代未聞の 大事件 となった。

 


この 悪党2人に 責任感や罪悪感など

到底 ある訳もなく

これから起こりうるであろう

説教 やら 諸々の 面倒な事から逃げる為

 


僕たちは 3人は 家出 をし

 


行く宛なく 155号線 を

 


ただ ただ 西へ 歩いていた。

 


空き缶を 蹴飛ばしたり

石ころを 蹴飛ばしたり

道端に咲いている いろんな花を

むしって 投げたり 

唾を吐いたり 踏み潰したりし

 


皆が 三人三様の 行き場の無い

もどかしさを かたちに していた。

 


どれくらい 歩いただろう

かれこれ 3時間くらい は たったと思う

 


着よう気ままな 薄着で来た為

陽が陰ってくると 少し 寒い

 


ポケットに手を突っ込んで

西陽が眩しいから 

俯向きながら歩いていると

 


「キィー キィー キィー」

 


後ろから ブレーキ音が 近づいて来る

 


見覚えのある 車 が 

ゆっくり 止まろうとしている

 


しばらくしたら 運転席と 歩いている 

 


僕が 真横に並んだ

 


そして 視線を 向けた

 


『お父さん…?』

 


『お父さん』

 


口には ださなかった いや 出なかった

 


ココロ の中で 呟いた 

 


『どうして ここが わかったの?』

 


『探してくれたの?』

 


いろんな 感情が 交差する中

 


ドアが 開いた

 


怒らなかった 叱らなかった

 


何も 言わなかった …

 


横顔が 少し 微笑んでいたかもしれない

 


その日 はじめて 僕たちは

お互いを 見つめ合った

 


何か 言おうとした

 


何か 言いかけた   …けど…

 


何も 言えなかった そして うつむいた

 


路肩に 白い花が咲いていた

西陽に照らされ

ゆらゆら 揺れている

 


僕たちは 3人は 

 


花を 踏まないように 車に乗った